VRやARのように「〇R」と呼ばれる技術は数多く存在しています。しかし、昨今では「XR(クロスリアリティ)」という言葉に集約されつつあることをご存じでしょうか。今回は、将来的にも期待が高まっているXR技術について、要素技術や活用事例も含めつつご紹介します。
目次
XRとは
XRは、現実世界と仮想世界を融合させて新しい表現や体験を作り出す技術の総称です。XRには、次のような技術が含まれています。
- VR(Virtual Reality=仮想現実):仮想世界を現実のように体験する技術
- AR(Augmented Reality=拡張現実):現実世界に仮想世界を重ね合わせて見せる技術
- DR(Diminished Reality=減損現実):現実世界に存在するものを仮想世界で見えなくする技術
- MR(Mixed Reality=複合現実):現実世界と仮想世界を融合させて新たな空間を映し出す技術
- SR(Substitutional Reality=代替現実):過去の映像を現在の映像に重ね合わせ、あたかも今起こっているかのように見せる技術
これらはもともと、独立した技術として開発・活用されてきました。しかし、昨今では複数の技術を組み合わせるケースも増えており、線引きが曖昧になっています。そういった背景から、これらの技術を総称するXRという概念が誕生し、世の中に浸透したのです。
XRに必要な要素技術
VRやARが実現した背景には、さまざまな要素技術の発展があります。ここでは、XRでどのような要素技術が使われているのかをご紹介します。
センサー技術
XRで現実世界と仮想世界を融合させるためには、現実世界の状況を正確に把握する必要があります。そこで必要になるのが、高精度なカメラをはじめとする各種センサー技術です。センサーによって現実世界の状況をリアルタイムに取得し、仮想世界に反映することで、XRのリアリティを高められます。
ディスプレイ技術
XRを体験するためには、何らかのディスプレイが必要です。現在は頭に装着するゴーグルのようなヘッドマウントディスプレイが主流であり、目の前に広がる仮想世界に没入する体験を得られます。今後はより小型で身につけやすいメガネ型のディスプレイも普及すると考えられており、XRが身近なものになっていくと期待できます。
グラフィックス技術
XRで仮想世界をよりリアルに生成するためには、グラフィックス技術も重要です。近年、半導体チップの性能向上によって3Dモデルを高精度かつ簡単に作れるツールが登場し、XRで活用されるようになりました。今後はAIを組み合わせることで、自動で仮想世界を生成できるツールなども提供されるようになるでしょう。
インタラクション技術
インタラクション技術とは、人間とシステムの相互作用を実現する技術です。たとえば、VRゲームでは手に持ったコントローラーを使って仮想世界の中を動き回ります。ARではスマートフォンのタッチパネルやジェスチャー機能を使って仮想世界を操作できます。今後は、センサーで取得した人間の動きをコントローラーなしに仮想世界に反映する、映像や音だけでなく触覚や嗅覚を使って仮想世界を体感する、といったように、より没入感を高めるためのインタラクション技術が発展すると考えられています。
通信技術
XRでは、リアルタイムにほかのユーザーと情報を共有したり、インターネット上のデータを処理したりするために、高速かつ安定した通信技術が必要です。そのため、高速・大容量、超低遅延、多数同時接続などの特徴を持つ5Gがよく活用されています。昨今話題となったメタバースと呼ばれる仮想世界上に多くのユーザーがアクセスするためには、5Gのような通信技術が必須であるといえます。
XRの活用事例
XRはすでに多くの分野で活用され始めています。ここでは、エンターテインメント、製造業・建設業・医療におけるXRの活用事例を簡単にご紹介します。
エンターテインメント
エンターテインメントの分野では、XRの活用が最も進んでいます。たとえば、仮想世界に没入できるVRゲーム、現実世界を歩きながらスマートフォンで仮想世界を体感できるARゲームなどは、多くの人は一度は遊んだことがあるのではないでしょうか。また、仮想世界に再現したコンサート会場でライブを行う、仮想世界に再現した街で買い物や会話を楽しむ、といった新しい楽しみ方がすでに実現しています。
製造業
製造業では、製品開発においてXRが活用されています。仮想世界に再現した製品の3Dモデルを見ながらレビューをすることで、作りやすさや品質を事前に確認し、後工程での手戻りを未然に防ぐことが可能です。また、XRは作業者のトレーニングにも活用されており、ARでマニュアルを見ながら作業する、VRの安全な空間で作業方法を学ぶ、といった体験が実現しています。
建設業
建設業では、現場でのシミュレーションにXRが活用されています。たとえば、ARで建物の3Dモデルを実際の現場に投影すれば、作業者は建物の構造を詳しく確認することが可能です。また、仮想世界上で施工手順をシミュレーションすれば、施工時間の短縮や作業の安全性を向上させることができます。
医療
医療現場では、患者の診断や手術でXRが活用されています。たとえば、MRIやCTによって取得した情報をもとに患者の状態を仮想世界上に再現すれば、医師はより正確な診断や治療方針を検討することが可能です。また、3Dモデルを使って手術前にシミュレーションをすれば、患者の負担を抑えやすくなります。
まとめ
今回は、VR・ARなどの総称であるXR(クロスリアリティ)についてご紹介しました。さまざまな要素技術の発展によって実現したXRは、今後もあらゆるシーンで活用されていくでしょう。引き続き、XRの進化に注目していきたいものです。
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