プリンテッドエレクトロニクスとは?電子機器の小型化・軽量化に貢献する注目技術

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近年、あらゆるものの電子化が進んでいる中で、従来の製造技術では解決できない課題が浮き彫りになりつつあります。そこで注目されているのが、プリンテッドエレクトロニクスと呼ばれる新しい製造技術です。プリンテッドエレクトロニクスの市場規模はこれから大幅に成長すると予測されており、さまざまな領域での活用が期待されています。
今回は、プリンテッドエレクトロニクスとは何かを簡単に紹介した上で、技術の特徴や代表的な用途などを解説していきます。

プリンテッドエレクトロニクスとは

プリンテッドエレクトロニクスは、印刷技術を用いて電子回路や電子デバイスを作るテクノロジーです。日本では「プリンタブルエレクトロニクス」と呼ばれることもあります。

プリンテッドエレクトロニクスで用いられる印刷技術には、次のような種類があります。

  • スクリーン印刷
  • インクジェット印刷
  • フレキソ印刷
  • グラビアオフセット印刷

プリンテッドエレクトロニクスの先駆けともいえる電子デバイスは、メンブレンスイッチと呼ばれるスイッチです。メンブレンは「膜」を意味しており、薄いフィルムに接点や回路パターンを印刷し、スペーサー材などを貼り合わせて作られています。現在も、パソコンのキーボードや家電製品のスイッチとして幅広く使われているものです。

2021年11月に発刊されたSDKI Inc.の「世界のプリンテッドエレクトロニクス市場ー予測2022ー2030年」のレポートによると、プリンテッドエレクトロニクス市場の規模は2022年の94.5億米ドルから、2030年には369.4億米ドルにまで達すると推定されています。2022年から2030年までのCAGR(年平均成長率)は21.5%と予想されており、これから大幅な成長が期待されている技術であるといえるでしょう。

プリンテッドエレクトロニクスの特徴

プリンテッドエレクトロニクスでは、基板となる材料に導電性インクなどを塗布して電子回路を作ります。プリンテッドエレクトロニクスが近年注目を集めている理由は、次の通りです。

  • 電子回路や電子デバイスの低コスト化が求められている
  • 電子機器の小型化・軽量化のニーズが高まっている
  • 環境保護の観点から、低エネルギーでの生産が求められている

現在、電子回路の製造技術で主流となっているのは「フォトリソグラフィ」と呼ばれる方法です。フォトリソグラフィでは、基板全面に材料を塗布した後に不要な部分を薬液で溶かして回路パターンを形成します。その仕組み上、多くの製造工程を経る必要があるため、高額な設備投資や材料・エネルギーの大量消費などが課題となっています。また、フォトリソグラフィでは一定のサイズに切り離した基板を使うため、一度にまとめて製造できない、工程間の搬送が必要である、といったデメリットもありました。

一方、プリンテッドエレクトロニクスでは、基板に必要な分だけの導電性インクを塗布して回路パターンを形成します。その結果、製造工程が大幅に短縮され、設備投資や材料・エネルギーの消費量を削減できるのです。さらに、ロール状に巻いた基板を装置に流して印刷を行うRoll to Roll方式で生産できるため、大量かつ高速に電子回路を作れるというメリットもあります。

プリンテッドエレクトロニクスのメリットは、ほかにもあります。プラスチックフィルムなどを基板にして電子回路を形成すれば、薄型・軽量でフレキシブルな電子デバイスを作ることも可能です。電子機器の小型化・軽量化のニーズが高まっている中で、プリンテッドエレクトロニクスによって作られた電子デバイスはこれまでなかった新しい価値を生み出し続けています。

プリンテッドエレクトロニクスの用途

プリンテッドエレクトロニクスは、自動車・モバイル機器・家電・ヘルスケアといったさまざまな領域での活用が期待されています。ここでは、代表的な用途をいくつかご紹介します。

ディスプレイ

プリンテッドエレクトロニクスによって、フレキシブルに曲がるディスプレイを生産できます。実際に、フィルム素材を使ったフレキシブル有機ELディスプレイがすでに存在しており、折りたたみ式のスマートフォンやディスプレイを巻き取れるテレビなどが実用化されています。また、紙の代替となる電子ペーパーディスプレイも今後の普及が期待されている製品であり、小売店の商品棚に使われる価格表示システムなどへの適用が検討されています。

太陽電池

今後、飛躍的に増加すると予想されているIoT機器を常時稼働させるための電源として期待されているのが、プリンテッドエレクトロニクスによって作られるフレキシブル太陽電池です。フィルム形状で薄く、軽量な太陽電池であれば、小型のIoT機器や電源を供給しにくい場所にあるIoT機器にも搭載しやすくなります。また、ビルや住宅の壁や窓など、従来の太陽電池では設置が困難な場所にフレキシブル太陽電池を設置することで、再生可能エネルギーの導入が促進されると考えられています。

RFIDタグ

製造業や物流業、小売業といったあらゆる業界で導入が進んでいるRFIDタグも、プリンテッドエレクトロニクスの用途の一つです。RFIDは電波を用いてICタグのデータを読み書きする技術であり、データを記憶するICチップと無線通信を行うアンテナで構成されています。RFIDは在庫管理や検品業務を効率化するために活用されており、人手不足の解消やミスの削減といったさまざまなメリットを得られます。

センサー

プリンテッドエレクトロニクスを応用すれば、薄くて軽いだけでなく、曲がったり伸縮したりするフレキシブルなセンサーを作れます。柔軟に形を変えられるフレキシブルセンサーはIoT機器やウェアラブルデバイスとの親和性が高く、今後あらゆるものが電子化していく上で役立つでしょう。また、従来よりも低コストに生産できることから、使い捨てが原則となっている医療診断用のセンサーにも適用できると期待されています。

まとめ

今回は、印刷技術を用いて電子回路や電子デバイスを作るプリンテッドエレクトロニクスについてご紹介しました。プリンテッドエレクトロニクスは電子機器の低コスト化・小型化・軽量化を実現するだけでなく、今までになかった新しい製品を生み出す可能性も秘めています。これからの情報社会を支えていくであろうプリンテッドエレクトロニクスに注目していきましょう。

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