近接覚センサとは?

技術コラム

これまで工場などで使用されてきたロボットは、事前に設定されたルールに従い動作する「位置制御」が用いられてきました。しかし、位置制御だけでは想定外の状況に陥ってしまうと適切な行動がとれず、あらゆる製品に対して臨機応変に扱うことはできません。

この状況を打破するために開発されたのが、「触覚センサ」です。触覚センサは人間の触覚が感じ取った情報を検出し、電気信号へと変換できるセンサになります。触覚センサによって従来のロボットでは難しかった、あらゆる製品を臨機応変に扱える動作ができるようになったのです。

触覚センサは主に3種類に大別できますが、今回はその中でも「近接覚センサ」をピックアップしてご紹介していきます。

近接覚とは?

そもそも「近接覚」とはどういった感覚を指しているのでしょうか?人間の五感には視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚があり、その中でも触覚は体表に物が触れた時に感じる感覚になります。人間は基本的に触覚を感じるためには、皮膚に何かが触れないと感じられません。

しかし、近接覚なら空間的に離れているようなものでも触覚を感じることができます。つまり、触覚が空間的に拡張され、非接触でもどんな手触りなのかが確認できることが近接覚と言えるのです。

近接覚センサを取り入れるメリット

近接覚センサはセンサと物体表面が近距離にある場合に触覚を検出できるセンサになるため、物体に触れていないことから厳密に言えば触覚センサとは異なり、視覚と触覚の中間に位置しています。

しかし、そんな近接覚センサだからこそ、視覚と触覚のメリットを両方享受できるのです。
例えば、触覚センサの場合は接触するまで物体を検出できないことから、接触する際に物体に近づこうとするとどうしても低速な動作になってしまいます。

視覚センサでも同様に、計測誤差の発生や死角が生じてしまうことから安全のために、物体に近づいたら低速な動作が基本となっているのです。一方、近接覚センサだと接触しなくても近くの物体を検出できるため、比較的高速な動作が可能になることや、衝突を回避できます。
つまり、近接覚センサを取り入れることで視覚・触覚センサよりも安全かつ素早い動作が可能になるのです。

近接覚センサの種類

近接覚センサにも様々な方式を取り入れたものがあります。続いては近接覚センサの種類をご紹介しましょう。

  • 超音波反射式超音波反射式は、センサから超音波を発信し、物体から反射して返ってきた超音波を受信する方式です。超音波の発信から受信までの時間を計測することで、センサから物体までの距離を測ります。超音波反射式であれば物体が複雑な形状をしていても特に関係なく、安定的に距離を検出できますし、物体が透明であっても検出可能です。また、ミストや汚れの影響をあまり受けないのも超音波反射式の強みと言えます。近接覚センサの中でも一般的なものであり、普及されています。
  • 光反射式光反射式は、センサから光を照射して物体から跳ね返ってきた反射光の受光強度・時間などから距離を計測する方式です。光を使うことで様々な物体にも対応できるのが特徴ですが、物体表面に凹凸があったり、外乱があったりすると計測結果に影響を及ぼしてしまう可能性があります。それでもコンパクト性に優れていることから、一般的に広く普及されている方式です。
  • 静電容量式静電容量式とは、電界を利用して物体の有無を検知することができる方式です。電界は帯電した物体の周囲に存在し、電荷に対して働く力が存在する領域を指します。静電容量式の場合、対象物が電界に入った時に静電容量がどれくらい変化したかによって対象物を検出することが可能です。金属などの導体はもちろん、誘導体の水や油、プラスチック、紙製品などでも検出できるのは大きな強みと言えます。ただし、物体の材質や形状などによって検出距離や感度が異なってしまい、また水分や湿気の影響も受けてしまうため、使用する際は注意が必要です。
  • 三角測量方式三角測量方式は、三角測量の原理を用いて物体との距離を計測する方式です。受光素子としてPSDなどの位置検出素子を用いることで、反射率などの影響を受けることもありません。また、信号処理回路が一体化されている点や豊富な種類が存在することも利点と言えます。デメリットとしては、最小検出距離が数センチとかなり近接でないと物体を検出できない点が挙げられます。
  • 渦電流方式渦電流方式とは、発振・共振・検波などの電子回路が組み込まれており、センサコイルから高周波の磁束を発生させることで対象物表面に渦電流を発生させ、その大きさで距離を計測する方式です。距離が近ければ近いほど渦電流は大きくなり、距離が遠いと小さくなります。電子回路が組み込まれているものの、構造自体は簡単なものであり、小型・軽量化しやすいという特徴があります。ただし、測定できる物体は金属のみであり、また金属の材質によっても感度は変わってしまいます。また、測定中の温度変化やランナウトの誤信号などに注意が必要です。

近接覚センサも取り入れられた触覚センサ「PLYON®」とは?

従来以上の安全性と正確性、スピーディーな操作を実現できるようになった近接覚センサは、触覚センサPLYON®にも取り入れられていることをご存知でしょうか?PLYON®とは、ドイツtacterion社が開発された触覚センサです。

一般的なタッチセンサと比較して、近接検知が可能になり、さらに堅牢性や柔軟性、システム統合や電気的・機械的統合も行いやすくなっています。

PLYON®の主な特長

PLYON®は主な特長として4つが挙げられます。

  • 曲げても感度の高いセンサセンサ自体を曲げた状態にしたまま使ってもタッチや近似のインタラクションを検知することが可能です。
  • 耐久性と耐水性に優れているセンサに大きな力を加えても耐久性に優れているため、簡単には壊れません。また、耐水性にも優れており多少の湿気などが精度に影響することも少ないです。
  • 柔軟性に優れ、あらゆる場所の触覚情報が解析できる形状の柔軟性から従来の触覚センサでは難しかった場所も、簡単に触覚情報を解析できるようになりました。
  • ゼロ点読み取りが可能ゼロ点読み取りが可能になったことで、センサを曲げた状態にしても一貫した測定基準を維持することができます。

PLYON®で採用されている近接覚センサ

PLYON®で採用されている近接覚センサは、静電容量方式です。静電容量方式は一般に普及されている光反射式などに比べて汚れなどにも強く、広範囲で物体を検出できるようになっています。

PLYON®の活用事例

PLYON®は近接覚センサによって素早く物体との距離を正確に計測することで、安全性の向上などが図れるようになります。また、形状の自由度が高いことから様々なアイテムに使用することが可能です。

例えば、カーインテリアや家電製品、電動工具などにも活用できます。

今回は、近接覚センサについてご紹介してきました。近接覚センサは触覚センサと視覚センサの中間にあたるもので、非接触でも物体を検出し距離を計測できることから、安全性の向上や素早い作業が可能になるセンサです。

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