ハプティクス

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私たち人間は「触覚」を持っており、モノの形や感触を確かめることができます。その触覚を人工的に作り出すハプティクスという技術が、さまざまな分野で活用されていることをご存じでしょうか。今回は、ハプティクスの概要や仕組み、用途などをご紹介します。

ハプティクスとは

ハプティクス(haptics)は、人間の「触覚」を人工的に作り出す技術です。触覚技術(haptic technology)と言われることもあります。

私たち人間は、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚のいわゆる「五感」によって周りの環境やモノを認識しています。ハプティクスでは、ユーザーに力・振動・動きなどを与えることで触覚を再現し、モノのさわり心地や情報を実際に触れているかのように伝えることが可能です。

ハプティクスはすでに私たちの身近なところで活用されています。たとえば、スマートフォンの画面をタッチするとボタンを押し込んでいるような感触を得ることがありますが、これもハプティクスの一種です。タッチする力の強さに応じて感触が変わるといったように、複雑な触覚を再現する技術がすでに実用化されています。

ハプティクスの仕組み

ハプティクスで触覚を再現するには、一般的にアクチュエータが使われています。たとえば、Apple社のiPhoneには「Taptic Engine」と呼ばれる部品が搭載されており、タッチパネルを押す圧力に応じて振動することでボタンを押し込んだかのような感触を作り出しています。また、アクチュエータを制御して的確なフィードバックを与えるためには、ユーザーから受ける圧力を正確に感知するセンサの働きも欠かせません。静電量や電子の変化によって圧力の大きさや向きを検出する力覚センサなどが活用されており、圧力を電気的信号に変えてアクチュエータを制御しています。

上述したハプティクス技術は、ユーザーが実際に触れている部分にリアルな触覚を与える「接触型」と呼ばれるものです。しかし、最先端のハプティクス技術の中には、実際に触れていなくても触覚を与えられる「非接触型」の技術も存在してます。たとえば、「超音波ハプティクス」という技術では、空中の任意の位置に超音波を集約させ、皮膚に振動を与えることで触覚を与えられます。この技術を応用すれば、VR・ARによって映し出されたモノの感触を確かめるといった新しい体験が実現できると期待されています。

ハプティクスの用途

ハプティクスは応用範囲が広く、さまざまな分野で活用されています。ここでは、代表的な用途をいくつかご紹介します。

自動車

自動車メーカーは、ハプティクスを取り入れてドライバーにより多くの情報を提供することを目指しています。たとえば、車線のはみ出しや衝突の危険性を検知するとハンドルを振動させてドライバーに警告し、事故を防止するといった用途です。また、物理的なボタンを排除して内装の高級感を高めるといった目的でも、ハプティクスが活用されています。

エンターテインメント

ゲームの分野でも、ハプティクスは積極的に活用されています。たとえば、「PlayStation5」のコントローラーには「ハプティックフィードバック」という技術が導入されており、車を運転する、銃を打つ、といったゲーム内のアクションに応じて振動することで没入感を高めています。また、XRの分野では、コントローラーやグローブからの振動によって仮想空間上で触れたモノの感触をリアルに感じることができます。

教育

ハプティクスは各種教育においても効果を発揮します。たとえば、製造業や建設業では技能向上や新人教育を目的にXRが活用されており、機械を操作する感覚などをハプティクスによって伝えています。また、学校教育においては、タブレット端末とペンで視覚・聴覚・触覚を刺激し、楽しく継続しやすい学習体験を実現する取り組みが行われています。

医療

ハプティクスは医療の分野での活用も期待されています。たとえば、手術ロボットを操作する際に医師に手術の感触を伝えることで、より正確な操作を実現できると考えられます。また、義手や義足にハプティクス技術を搭載することで、より自然な動きや感覚を実現することができます。

まとめ

今回は、人間の「触覚」を人工的に作り出す技術であるハプティクスについてご紹介しました。ハプティクスはロボットやXRといった先端技術との親和性が非常に高く、注目が集まっています。ハプティクス技術の発展に伴って小型・薄型のデバイスにも導入できるようになっており、ますます用途が広がっていくと考えられます。

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