私たちが暮らしている世界には空気やガス、水、オイルといった気体や液体が存在しており、これらを上手く利用することで生活を豊かにしてきました。しかし、気体や液体の中には、取り扱いを間違えると危険なものも多く存在します。そこで、気体や液体を安全に扱い、生活の質を向上させるために「流体力学」が発達し、流体を力学的に評価するための「流体計測」が生まれました。
今回はそんな流体計測について、詳しく解説していきます。
流体計測とは
流体とは、固体と違って自由に形を変える連続体である「気体」や「液体」の総称として用いられる言葉です。流体の動きは目視では分からない不可視現象であることから、これをさまざまな方法で可視化させ、流体の流れの速さや量、向きなどを計測する「流体計測」が生まれました。
流体計測では、流速や流量のほかに圧力、温度、密度なども測定量として扱われています。測定対象となる流体や測定量は多岐にわたるため、流体計測機器もそれらに合わせてさまざまな種類や形状のものが存在します。
流体計測機器として有名なものの一つに、ピトー管があります。ピトー管はベルヌーイの法則を利用して、気体の圧力を速度に変換することで流速を測る計測器です。飛行機の羽根や機首に取り付けて、飛行機の周辺の流速から飛行機の速度を測る機器として長い歴史があります。
このほかにも、加熱された金属線から放たれた熱量を計測することで、金属線の周囲の流体の速度を算出する方法や、実際に粒子を流して流体の動きを可視化し、カメラで撮影する方法などがあります。
流体計測器・計測法
ここでは、さまざまな流体計測器や計測法の中からいくつか抜粋し、計測の原理について解説します。
PIV
PIVは粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry)の略称で、流体に混入させたトレーサ粒子にレーザー光を照射し、流体の速度と方向を同時に解析する計測法です。近年では風洞試験に利用されるなど、カメラや画像処理技術の発展に伴って精度が上がりメジャーな計測法となりました。
基本的な原理としては、まず最初に流体内にトレーサ粒子と呼ばれる小さな粒子を混入させます。その後、流速を計測したい場所にレーザー光をシート状に照射し、短時間で2枚の粒子群画像をカメラで取得します。その後、画像を解析して個々の粒子を識別し、粒子の移動速度や方向を算出します。
画像の解析方法には直接相関法やFFT法などがあり、使用する機材やソフトによっては2次元情報だけでなく3次元情報を取得することも可能です。画像解析を行うソフトウェアは用途に応じて各メーカーが独自に開発したものが販売されているため、測定対象の流体の種類や予算に応じて選択できます。
PIVはほかの計測方法と違って、非接触で広範囲を同時に計測できるというメリットがあり、河川の流速計測や雪をトレーサ粒子とした防雪柵の機能評価などに使用されています。
超音波流量計
流体の流量を計測する機器を流量計と言いますが、さまざまな測定方法があるため種類が豊富です。測定対象となる流体の種類や設置場所に応じて、適切な流量計を選ぶ必要があります。流量計にはコリオリ式や電磁式、熱式や差圧式などの測定原理を利用したものがありますが、その中に超音波式というものがあります。
超音波式流量計では、流体が流れる配管の外側から超音波を当て、超音波が伝達するまでの時間や周波数の変化から流速を計算し、管の断面積と流速から流量を算出します。超音波式流量計には、伝達するまでの時間から算出する「伝播時間差式」や、反射波の周波数の変化から算出する「ドップラー式」がありますが、伝播時間差式の方が製品化されていることが多いです。
伝播時間差式流量計では、流体の流れに乗ると早く到達し、逆になった場合は抵抗を受けて到達までに時間がかかるという超音波の特性を利用しています。配管の上流と下流に超音波センサーを置き、それぞれの音波の到達時間の差から流速を計算し、流量を算出します。
超音波式流量計はクランプオン型と言われ、配管の外側に取り付けて流量測定ができるため、流体に非接触で計測でき、メンテナンスも容易というメリットがあります。また、構造がシンプルなので小型なのも特徴の一つであり、近年では複式が主流であるガスメーターに超音波式流速計を採用することで小型化に成功した例もあります。
まとめ
今回は流体計測とは何か、実際に使用されている計測器や計測法を交えて解説しました。
流体計測と一口に言っても、計測対象となる流体が液体なのか気体なのか、河川のような広い空間に広がる流体なのか、それともガスやオイルのような細い管を通る流体なのかで測定方法や計測機器が大きく変わります。
センサーの小型化や画像解析技術の向上に伴って新たな計測方法が確立するなど、今後さらに発展していく分野であると予想されます。
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