AGVではどのようなセンサが使われる?主要な方式別にAGV向けセンサを解説!

技術コラム

近年で急速に普及したロボットの一つに、AGV(無人搬送車)があります。製造業や物流業ではAGVが積極的に導入されており、今後はほかの業界にも広まっていくと考えられます。AGVは人が操作せずに自動で走行するロボットですが、それを実現するには各種センサの存在が欠かせません。今回は、AGVの主要な走行方式や使用されているセンサについて解説いたします。

AGVとは

AGVは、主に工場や倉庫などで活用されている搬送用のロボットです。材料や部品、商品などを積み、人が操作をしなくても目的地まで自動で移動します。AGV自体は1990年代から存在していたため、まったく新しい機器という訳ではありません。しかし、かつてのAGVはあらかじめ決められたルート上を移動するだけで自由度が低く、用途が制限されていました。
しかし、近年のAGVは各種センサやAI、ビッグデータなどの技術が発達したことによって大幅な進化を遂げています。今では、屋内・屋外を問わず使用でき、不定形なルートを自律走行できるものが登場しました。AGVの進化に伴って、これまでは台車やフォークリフトを使っていた搬送作業の見直しが進んでいます。従来の人の力を必要とした搬送作業が、AGVの進化によって変わりつつあるのです。

AGVで使われるセンサを方式別に解説

AGVにはさまざまな走行方式があり、用途に応じて使い分けられています。ここでは、主要な5つの走行方式の仕組みや、それぞれに使われているセンサについてご紹介します。

磁気誘導式

磁気誘導式のAGVは、床に磁気棒を埋めたり、床面に磁気テープを貼ったりしてルートを作り、そのルートに沿ってAGVが走行するという仕組みです。

磁気誘導式のAGVでは、磁気センサが使用されています。磁気センサは磁界の大きさや方向を検知するためのセンサであり、AGVでは磁気棒や磁気テープの磁界を検知しながら目的地まで誘導する役割を担います。磁気誘導式は仕組みが単純で信頼性も高いため、2021年現在で最も普及している方式です。ただし、磁気棒や磁気テープを設置する工事が必須であり、ルートを変更するたびに再工事をしなければならない点がデメリットとなります。また、ルート上の床面に鉄骨や配管などが埋まっていると不要な磁界が発生してしまい、磁気センサが誤作動を起こす可能性があるので注意が必要です。

光学誘導式

光学誘導式のAGVは、磁気誘導式と同じく床に誘導用のテープを貼ってルートを作り、そのルートに沿ってAGVが走行する仕組みです。

磁気誘導式と大きく異なるのは、光学センサによって光の反射で誘導テープを認識しながら走行する点です。特殊な磁気テープではなく、一般的なビニールテープを貼るだけで走行ルートを作れるため、磁気誘導式に比べると低コストでAGVを導入できます。

画像認識方式

画像認識方式のAGVは、床や天井に設置したQRコードやARマーカーを読み取ることで自分の現在位置を把握しつつ、目的地まで自動走行します。

画像認識方式のAGVには、QRコードやARマーカーを認識するためのセンサとしてカメラが搭載されています。AGVの走行領域内に位置情報の含まれたQRコードやARマーカーを一定間隔で貼り付けておき、カメラがそれらを読み取ることで、高精度な位置制御が実現します。

画像認識方式のAGVはAmazonの物流倉庫で導入されたことで注目を集めました。事前にQRコードを貼り付ける手間はありますが、リアルタイムなルート変更が可能なため、磁気誘導式や光学誘導式に比べると自由度が格段に向上します。ただし、周辺環境を把握することが困難なため障害物を回避して走行することはできず、基本的にはAGV専用の無人環境下で稼働させることになります。

レーザー誘導式

レーザー誘導方式のAGVは、照射したレーザー光が壁や床に取り付けた反射板に反射して返ってくるのを検知しながら、自動走行します。

レーザー誘導式では、レーザーレーダーを主要なセンサとして搭載しています。まず、パルス上のレーザー光を発して、反射した光が返ってくるまでの時間から反射板までの距離を計測します。その後、事前にインプットした反射板のレイアウト情報を元に三角測量法によって自分の位置情報を算出することで、現在位置や向きを把握するという仕組みが一般的です。
レーザー誘導式は画像認識方式と同じく高精度な位置制御が可能であり、リアルタイムなルート変更もできます。ただし、AGVの走行領域全体に十分な数の反射板を取り付けなくてはならず、工場や倉庫のレイアウトによっては導入が困難なこともあります。

SLAM誘導式

SLAM誘導式のAGVは、これまでに紹介したAGV方式では必要だったテープやQRコード、反射板のような誘導体を必要としないことから、ガイドレスAGVやAMR(自律型協働ロボット)とも呼ばれています。

SLAMとは、「自己位置推定と環境地図作成を同時に行う」技術のことです。簡単に言うと、自分が今どこにいるのか、周辺がどうなっているのかを把握する技術であり、ロボットの自律走行には欠かせない技術となっています。
SLAM誘導式のAGVには、メインセンサとしてカメラを用いるVisual SLAMと、レーザーレーダーを用いるLiDAR SLAMの2つがあります。Visual SLAMはカメラで取得した連続する画像データの変化を、LiDAR SLAMでは赤外線レーザーの反射によって得た連続する点群データの変化を使って、誘導体なしで自己位置推定と環境地図作成を行います。
SLAM誘導式の特徴としては、誘導体の設置が不要なこと、自由に走行ルートができることなどが挙げられます。また、障害物を検知して避けられるので、有人環境下でも安全に使用できることも大きなメリットといえます。このように非常に優れた性能を持つSLAM誘導式ですが、まだまだ完璧な自律走行とはいえないのが現状です。自己位置推定がうまくいかずにAGVが迷子になるといったケースも見受けられるので、さらなる技術革新が期待されています。

まとめ

今回は、AGVの主要な走行方式や使用されているセンサについて解説しました。最後に、紹介した走行方式の特徴を整理しましょう。

走行方式誘導体主要なセンサ特徴
磁気誘導式磁気棒・磁気テープ磁気センサ実績が豊富
実ルート変更が困難
工事が必要
光学誘導式テープ光学センサ磁気誘導式よりも
 低コスト
ルート変更が困難
テープの貼り付けが必要
画像認識方式QRコード・ARマーカーカメラ高精度な位置制御
ルート変更が容易
QRコードなどの
 貼り付けが必要
レーザー誘導式反射板レーザーレーダー高精度な位置制御
ルート変更が容易
反射板の設置が必要
SLAM誘導式不要カメラ・レーザーレーダー誘導体が不要
ルート変更が容易
有人環境下で使用可能

今回紹介した主要なセンサ以外にも、衝突防止などの用途でさまざまなセンサがAGVには搭載されています。AGVの自動走行は各種センサの働きによって成り立っているといえるでしょう。AGVがさらなる進化を果たすための新しいセンシング技術が継続的に開発されているため、注目していきたいものです。

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